道路の真ん中で仁王立ちするカマキリ。
皆さんも一度はこんな光景を目にしたことがあるのではないでしょうか?
大きなカマキリがアスファルトの上で堂々と構え、そのまま車にひかれてしまう…動物好きとしてはなんとも切ないシーンです。
でも、なぜカマキリはわざわざ道路のど真ん中に出てきてしまうのでしょう?本記事では、その不思議な生態と驚きの理由について、楽しくわかりやすく解説します。
秋に道路で見かけるカマキリの謎
夏の盛りにはあまり見かけないのに、秋になると急に道路上でカマキリを見かける機会が増えます。
実はこれには季節とカマキリのライフサイクルが大きく関係しています。
カマキリは変温動物(外気温で体温が変わる生き物のこと)なので、気温が下がると自分で体を温めることができません。
そのため、朝晩冷え込む秋には日光で温まった場所を求めるようになります。
特に日中のアスファルト道路は太陽の熱を蓄えてホットカーペットのようにポカポカです。
涼しくなる秋~初冬、カマキリはできるだけ暖かい場所を探して道路にやって来てしまい、その結果、車にひかれてしまうことがあるのです
まさに「暖を求めて命を落とす」とは皮肉な話ですが、彼らにとっては切実な生存戦略なのですね。
なぜわざわざ道路の真ん中を歩いちゃうの?
カマキリが道路に出てくる理由は分かりましたが、どうしてよりによって道路のド真ん中を歩いてしまうのでしょうか?
端っこを歩けば車にひかれにくいのに…と不思議に思いますよね。ここにはカマキリの習性と視覚特性が関係しています。
まずカマキリには一直線に進む習性があると言われます。一度狙った獲物や目標に向かうと、障害物がない限りまっすぐ突き進む傾向があるのです。
道路という開けた場所では、カマキリにとって邪魔な草木もなく視界良好ですから、目的地が見えていると一直線に進んでしまいます。その結果、気づけば道路の真ん中まで出てきてしまうというわけです。本人(本虫?)に悪気はないのでしょうが、車から見ればヒヤヒヤものです。
さらに道路の真ん中は日当たりが良く、両脇より暖かい場合があります。先ほど述べたように秋のカマキリは暖かさを求めていますから、つい真ん中の暖かい場所へ引き寄せられてしまうのかもしれません。
もう一つ考えられるのは、道路の色と光の関係です。道路の多くは灰色や白っぽい色をしていますが、実は灰色や白は光(特に紫外線)をよく反射する色です。
昆虫の多くは人間と違って紫外線を見ることができるので、灰色・白色の反射は彼らにはとてもよく目立ちます。
例えば夜に虫を集めるライトトラップの幕が白いのも、虫に見えやすいからなんですよ。
つまりカマキリからすると、灰色のアスファルト道路は周囲の景色より明るくキラキラした場所に映っている可能性があります。
特に晴れた日の正午など、日光が強い時には道路表面が反射して輝いて見えるでしょう。カ
マキリがその光に向かってまっすぐ歩いてしまえば、結果的に道路の中央へ一直線…という事態になり得るのです。
「光の先へまっしぐら」というとなんだかロマンチックですが、実際は命知らずな行動になってしまっています。
カマキリの視覚と判断力:なぜ逃げないの?
道路の真ん中で悠々と歩いているカマキリですが、車が近づいても飛んで逃げたりしないのは不思議ですよね。
カマキリは一応翅(はね)を持っていて飛ぶこともできますし、危険を感じれば素早く動けるはずです。そ
れなのに、なぜ車にひかれてしまうほど鈍感なのでしょうか?
実はカマキリの視覚と判断にはいくつか特徴があります。
カマキリは動くものに反応する視覚を持ち、ゆっくりした動きや遠くの動きにはあまり反応しない傾向があります。
車は高速で近づいては来ますが、彼らにとって車の存在は天敵としてプログラムされていない未知の脅威です。
視界に入っていても、それが自分に危害を加える巨大な危険物だと認識できないのかもしれません。
人間だって初めて見るものには対応が遅れることがありますが、カマキリにとって車はまさに想定外の物体なのでしょう。
また、カマキリの逃走戦略にも一因があります。
カマキリは基本的に待ち伏せ型のハンターで、自分から素早く逃げ回るよりも、身を隠してやり過ごすタイプです
危険を感じたとき、彼らはシュッと素早く草陰に隠れるか、逆に威嚇ポーズをとって敵を驚かせようとすることがあります。
しかしそれは残念ながら車にはまったく通用しません。
中国の故事に「蟷螂の斧(とうろうのおの)」という有名な話があります。
道に立ちはだかり馬車に斧(実際にはカマです)を振り上げたカマキリが、自分の力では馬車に敵わないことを知らず、結局轢かれてしまったという逸話です。
まさにカマキリが車にひかれる様子を言い表したかのような寓話ですよね…。
カマキリ本人は真剣なのでしょうが、その勇敢すぎる姿は人間から見ると「無謀」というほかありません。
さらに言えば、飛んで逃げない理由として体力や身体的な制約もあります。
特にメスのカマキリは体が大きく重いので長距離を飛ぶのは苦手です。
秋も深まる頃には産卵を終えて体力が落ちていたり、気温低下で筋肉が十分に動かなかったりすることもあります。
そうなると、いざ車が迫っても飛び立つ余裕がなく、間に合わないこともあるでしょう。
結果として「なんで逃げないの!?」という状況でそのまま轢かれてしまうことになるのです。
実は寄生虫に操られていた!?驚きの説
ここまでカマキリ自身の習性や環境要因について説明してきましたが、実はもう一つ仰天ものの理由が考えられています。
それは寄生虫によるカマキリ操作説です。カマキリのお腹の中には時折「ハリガネムシ」という寄生生物が潜んでいることがあります。
ハリガネムシは細長い糸のような寄生虫で、カマキリやバッタに寄生し、成長すると宿主を水辺に誘導するという特殊な生態を持っています。なぜ水辺かというと、ハリガネムシは水中で産卵・繁殖する生き物だからです。
研究によれば、ハリガネムシは水面に太陽光が反射するキラキラとした光を感知し、それに向かって宿主を歩かせる能力があることが分かっています。
寄生されたカマキリはまるでゾンビのように操られ、水を求めてフラフラと歩き回るのです。
ここで前述の道路の話を思い出してください。灰色の道路は光を反射してキラキラして見える場合がある…そう、ハリガネムシに操られたカマキリからすると、道路は水辺と勘違いする紛らわしい環境になり得るのです。
この寄生虫説は、すべてのカマキリに当てはまるわけではありません。寄生されていないカマキリも当然道路に出てきます。
生態系の中で寄生生物が昆虫の行動にまで影響を与えるというのは驚きですが、自然の奥深さを感じるエピソードでもありますね。
まとめ
カマキリが道路の真ん中で車にひかれてしまう理由をまとめると、
- 秋~初冬の気温低下によって暖かいアスファルトに引き寄せられる
- 繁殖や産卵のための移動で開けた場所に出ることが増える
- 一直線に進む習性と反射光への誘引で結果的に道路中央に出てしまう
- 視覚・判断の限界や逃走本能の欠如で車を危険と認識できず避けられない
- 極めつけは寄生虫ハリガネムシの操作によって水と勘違いして道路に向かう個体がいる
といったものが絡み合っています。身近な昆虫の何気ない行動にも、こうして理由を探ってみると実にドラマチックで驚きに満ちているものですね。
車道でカマキリを見かけたら、彼らに悪気はないとはいえ「早くどいて~!」と声をかけたくなってしまうかもしれません。
残念ながらカマキリに交通ルールは理解できませんから、人間の側が注意するしかありませんが…。自然界のユニークな一面を知るとともに、道路で命を落とす小さな生き物にも思いを馳せて、安全運転でいきたいですね。