
自然分解が起きにくい人工空間で起きること
夏のある日ふとベランダを見下ろすと、蝉の死骸が転がっている――。
黒く硬い翅、カラカラに乾いた身体。ちょっと嫌な気持ち。
「このまま放っておけば、勝手に消えるんじゃない?」
「そのうち風が吹いてどこかに飛んでいくだろう」
そんなふうに考えて、そのままにしていませんか?
実はそれ、間違いです。
ベランダという空間は、自然界とは大きく異なる環境であり、そこに落ちた蝉の死骸が「自然にいなくなる」ことはほとんどありません。
この記事ではなぜベランダの蝉の死骸は消えにくいのか、その理由と背景をじっくりと掘り下げてみたいと思います。
普通の地面において 蝉の死骸が“自然に消える”とはどういうことか?
まず、自然の環境において蝉の死骸が自然に消える、つまり「いなくなる」とはなにが起こっているのでしょうか。
・分解者による分解(アリ・バクテリア・菌類など)
地面にいるセミをいち早く見つけてやってくるもので分かりやすいのがアリたちです。
死骸の匂いをすぐに察知して仲間に伝えます。
数時間後には、複数のアリが死骸の周囲を歩き回り、少しずつ持ち帰ったりその場で解体したりします。
・捕食者による持ち去り
カラスや野良猫などがセミの死骸を持っていくこともあります。セミは栄養豊富であるため彼らの貴重な食糧です。
・太陽光による
・風や雨による物理的移動
強い風や雨による水流で死骸が移動します。この場合は消えたというよりは見えなくなったというのが正しいです。
自然環境では、これらの要素がバランスよく機能し、動物の死骸は数日〜数週間で土に還っていきます。
ところが、ベランダではこの循環がうまく回りません。
◆ ベランダは“自然”じゃない
ベランダという空間は、一見開放的なようでいて、自然界の多くの機能が遮断されている閉鎖的な人工環境です。
● アリがいない・来られない
地面の上ならば、死骸はすぐにアリたちの餌になります。アリは驚くほど素早く死骸を見つけ、群れで分解していきます。しかしベランダにはこの「掃除屋」がやってきません。
コンクリートに囲まれ、階段や壁に隔てられたベランダは、アリにとって非常にアクセスしづらい場所。特にマンションの2階以上では、ほぼ来ないと考えていいでしょう。
● 土壌微生物がいない
自然の地面には無数のバクテリアや菌類が存在し、動物の死骸を分解する力を持っています。しかし、ベランダの床はほとんどがコンクリートやタイルで構成され、土もなければ湿度も保たれていません。微生物たちにとっては過酷すぎる環境なのです。
● 雨と風の力でいなくならない
ベランダは構造上、雨や風によってセミの死骸がどこかに運ばれるということがありません。
ベランダのセミの死骸はずっと残る
ベランダの蝉の死骸は、何ヶ月もそのまま残り続けることができます。
セミの外骨格はかなり頑丈であるため紫外線による風化もかなり時間がかかります。
管理人の家では、11月になってもベランダの隅に蝉の死骸がそのまま残っていたことがありました。
放置していいのか?衛生面の問題
「いなくならないなら放っておくか」というわけにもいきません。
- 蝉の死骸は意外と腐敗臭が出やすい(高温・多湿だと特に)
- 小さな虫(コバエやカツオブシムシ)を呼ぶ可能性がある
- カビの原因になることもある
- 子どもやペットが触れてしまう可能性がある
見た目の問題もあるので、早めの処理が推奨されます。
腹をくくって処理をしよう
- 新聞紙やティッシュで包み、ビニール袋に入れる
- 「燃えるごみ」として捨てる
- 可能であればベランダの床も拭き掃除する
死骸に触れるときは、軍手やビニール手袋あるいは割りばしがあると安心です。
乾燥していれば匂いは少ないですが、腐敗が始まっている場合はすぐに片づけましょう。
◆ まとめ:ベランダに“自然”はない
ベランダの蝉の死骸が「勝手に消える」ことは、基本的にありません。
そこは土もアリも微生物も雨も少ない、“自然”から切り離された人工空間。
だからこそ、そこにいるのが人間である私たちならば、最後の“見送り”として、そっと拾って処理してあげましょう。