代用乳の存在:粉ミルクとハイテク哺乳機で育つ子牛たち
母牛から離された子牛たちは、人間の赤ちゃん用ミルクに相当する「子牛用粉ミルク」を飲んで育ちます。
この粉ミルクは業界では「代用乳」とも呼ばれ、その名の通り母牛の母乳の代わりとなる栄養満点のミルクです。
材料には脱脂粉乳やホエイ(乳清)などの乳製品をベースに、子牛の成長に必要な脂肪やタンパク質、ビタミン、ミネラルがバランスよく配合されています。
製品によって特徴も様々で、高たんぱくで子牛の体重増加を促すタイプや、消化の良い中鎖脂肪酸を強化した高エネルギータイプ、腸内の乳酸菌やビフィズス菌を増やしてお腹の調子を整えるタイプなど色々な代用乳が市販されています。
いずれもお湯に溶かすだけでサッと使える粉末で、溶けやすさや衛生面にも工夫が凝らされています。
一般的に代用乳は牛の生乳(全乳)より安価に作られており、牛乳をそのまま子牛に飲ませるよりコストを抑えられるため、大規模な酪農では積極的に活用されています。
また、生乳を飲ませる場合に問題となる病原菌の感染リスクも、粉ミルクなら加熱殺菌済みなので低く抑えられます。
まさに子牛を健康に育てるために開発された優秀なフードなのです。
では実際に酪農家さんたちは、どのようにこの粉ミルクを子牛に与えているのでしょうか?
昔ながらの方法では、人が哺乳瓶(乳首のついた大きな哺乳瓶)やバケツに調乳したミルクを用意し、1日2~3回、時間を決めて子牛に飲ませます。
子牛用の小屋で飼われている子牛の場合、1日に2回、合計4リットル程度の代用乳を与えるのが一般的です。
生まれたばかりの子牛は最初はミルクしか飲めませんが、生後数週間で胃が発達してくると乾草や配合飼料にも徐々に慣らしていき、だいたい生後2~3か月齢でミルクを卒業(離乳)します。
離乳までのミルク期間の長さや与え方は各農場の方針によって異なりますが、子牛の健やかな成長のために最適なプログラムが組まれているのです。
母牛と子牛の絆:母子分離しない育て方はあるの?
早期に母子を分けるのが当たり前の酪農ですが、「本当はお母さんと一緒にいられた方が子牛も幸せなのでは?」と感じる方もいるでしょう。
実際、母牛と子牛の絆(きずな)は出産直後から芽生えるもので、自然な環境では生後しばらくは常に寄り添って生活し、徐々に群れの仲間と行動するようになるとされています。
そうした動物本来の姿に近づけようという試みも一部で行われており、近年では海外を中心に「母子分離をしない酪農」のあり方が議論・研究されています。
まとめ
牛たちが健康で幸せに育ってくれることが、おいしい牛乳を私たちがいただくことにも直結します。
酪農の現場では日々試行錯誤しながら牛にも人にも優しいやり方が追求されています。
私たちも牛乳を飲むときそんな子牛たちや酪農家さんの努力に思いを馳せてみると、きっと今まで以上に「あたたかい気持ち」で味わえるのではないでしょうか。
牛たちへの感謝を胸に、これからもおいしいミルクを楽しみたいですね。