子牛は母乳を飲めるのか?早期の母子分離
結論からいうと、酪農の現場では子牛は生まれてすぐ母牛とは離されることがほとんどです。
多くの場合出産当日か遅くとも翌日には母子を分離し、子牛は子牛専用の小屋へ引き取られます。
これは人間の目には少し可哀想にも映りますが、実は子牛と母牛双方の健康と安全のためでもあります。
たとえば母牛は出産直後こそ母性本能が強く働きますが、数時間経つと自分が普段暮らす牛の群れに戻りたくて不安になる習性があります。
その不安から落ち着きなく動き回った母牛が、足元の子牛をうっかり踏んでしまう事故も現実に起こり得るのです。
酪農家にとって大切なのは牛たちの健康と命を守ることですから、そうした不幸を避けるためにも早めに母子を別々にするわけです。
また、生まれたばかりの子牛には自力の免疫がなく初乳が命綱ですが、「親子に任せきりにすると本当に十分な初乳を飲めたか分からない」「母牛の乳房が汚れていると初乳に細菌が混入し病気のリスクがある」などの理由もあります。
人の手で清潔な初乳を計画的に与えた方が子牛の健康管理がしやすいのです。
さらに、母子の情が深くなってから引き離すとお互いストレスが大きくなるため、あえて絆ができる前に離すことで別れのつらさを軽減する効果もあるとされています。
実際、産後に何日も母子一緒に過ごさせてから分離した場合、母牛が大声で子牛を呼んで探すなど強いストレス反応が見られますが、生後6時間~1日以内に分離すればそうした反応はかなり抑えられるという報告もあります。
酪農家さんは決して「子牛に母乳を飲まれるともったいないから」という理由だけで引き離しているわけではなく、牛たちの安全・健康を考えたうえで最善のタイミングで母子分離を行っているのです。
とはいえ、母牛から引き離された子牛がお腹を空かせたまま…なんてことはありませんのでご安心を。ここからは、母牛と離れた子牛たちがどうやってミルクを飲んで育つのかを見ていきましょう。