北極海のイッカクは、海のユニコーンなんて呼ばれますよね。
海面からスッと突き出す長い角はぽきっと折れてしまいそうですよね。
この記事では、角の正体、角の機能(、そして折れたらどうなるのかまでを解説します。
角の正体:じつは歯が伸びたもの
イッカクの“角”は、左上の犬歯が一本だけ極端に伸びたキバです。
右側にも犬歯はありますが、通常は短いままです。
このキバはらせん状にねじれながら伸びています。
表面はエナメル質(歯の硬いコート)がほとんどなく、代わりにセメント質(歯根を覆う層)と象牙質(歯の芯をつくる硬い組織)が外側まで露出しています。
ここがイッカク最大の個性です。
角はメスにはない?何のためにあるの?
このイッカクの角はオスにしかないです。
そのためメスにアピールするために生えているというとも考えられていますが、実際のところははっきりしていません。
ここでは考えられている角の機能をご紹介します。
角の機能①:センサー(感覚器)として周囲を読む
象牙質には象牙細管という超細いトンネル状の管がびっしり通っており、外海水の化学情報や温度の変化を歯髄(しずい:歯の神経と血管が通う部分)へ伝える役割を果たします。
つまりこのキバ、見せる武器であると同時に感じるアンテナでもあるのです。
海水の塩分・温度・圧力がわずかに変わるだけでも、象牙細管を通じて微弱な刺激が歯髄に届きます。
これにより、イッカクは水の変化や氷縁の環境を把握できると考えられています。
角の機能②:ほかのオスとの競争のかなめ
オスのキバは成長とともに長く太くなり、年齢・体格・健康状態をしめします。
オス同士がキバを擦り合わせる・小突き合う行動が観察されますが、これは致命的な戦いというより順位付けや見せ合いの要素が強いと考えられます。
角の機能③:採餌の補助(コツンで魚を鈍らせる)
近年の映像では、イッカクがキバで小魚をコツンと叩いて気絶させ、口で吸い込む様子も報告されています。
いわばトンファーのような使い方です。
ほかにも氷を突き破る道具とも考えられています。
ここから本題:角が折れたらどうなる?
では、折れ方ごとに整理してみましょう。
先端が欠ける・擦り減る
キバは一生伸び続ける歯です。
先端の小さな欠けや摩耗は、時間とともに全体が少しずつ前へ送り出されるため、
目立たなくなることが多いです。完全な元通りではありませんが、機能への影響は小さいです。
根本から折れる
ここまで来ると再生は難しいと考えられます。
根元からの新生は期待しにくいので、短い角のまま生涯を送ります。
それでも生活不能というわけではなく、角の折れた野生個体の観察されています。
おわりに
イッカクの角は、角ではなく左上犬歯が伸びたキバで、センサー・社会シグナル・採餌補助という多機能を担っています。
先端の欠けや中ほどの破断はたしかにハンデですが、根元から伸び続ける歯の性質に支えられて、多くの個体は折れたままでも暮らしを続けることができます。
にしても、あんなに長い角はてこの原理で簡単にぽきっといきそうですよね…