「マンモスは美味しいの?」この問い、妙にそそりますよね。
結論から言えば、実食の確かな記録はないというのが身も蓋もない答えです。
今回はマンモス肉にまつわるあれこれをご紹介します。
「食べた」神話の正体——エクスプローラーズ・クラブの“伝説”は海ガメだった
1951年、米国のエクスプローラーズ・クラブでマンモス肉が振る舞われたという有名な逸話があります。
ところが2016年に行われたDNA解析では、提供された肉はマンモスではなく海ガメだったと結論づけられました。
つまり偽物だったのです。
「シベリアで発掘隊がマンモス肉を食べた」という話も昔から出回りますが、根拠が薄いか、腐敗臭で“食べ物にならなかった”**という記録が多く、信頼できる一次資料は乏しいのが実情です。
永久凍土なら新鮮という考えは間違い
ここで押さえたいのが永久凍土(ペルマフロスト)です。
一年中凍ったままの地層を指し、シベリアなどで動物の死体が長く保存されることがあります。
ただし“冷凍=安全”ではありません。
凍土が解ける・再凍結を繰り返すうちに腐敗菌(=食べ物を分解する細菌)が動き、臭気・変性が進んでいる可能性があります。
さらに炭疽菌のような芽胞(硬い殻で長期生存する細菌の休眠形)は土壌や凍土で長く生き延びうることが知られており、衛生リスクの観点からも発掘して食べるというこてゃ困難です。
一方で、凍土由来のウイルスが直ちに現代人へ大きな脅威を与えると断言するのも行き過ぎです。
近年の総説では、凍土のウイルスリスクは他の土壌・水環境と大差ないという見方も提示されています(= 脅威はゼロではないが過度に恐れる段階でもない)。
いずれにせよ考古学的遺体は学術資産であり、食品として扱う発想自体がナンセンスであるここははっきりさせておきたいところです。
2023年のマンモス・ミートボールは作れたが、誰も食べていない
2023年、豪スタートアップが**“マンモス・ミートボール”を発表して話題になりました。
これは培養肉の一種で、ヒツジの細胞にマンモスのミオグロビン遺伝子を導入して作った食品です。
ミオグロビンは筋肉の色と“肉らしい香り”に関与するタンパク質で、「肉の風味の要」とよく説明されます。
とはいえこのミートボールは安全性が未確認(= 人類が数千年食べていないタンパク質へのアレルギーなどの懸念)ゆえ、誰も口にしていません。
つまり味は不明のままです。
それでも“味”を想像するなら——近縁種と生理学からの推理
ここからは推理の話です。
マンモスは大型の草食動物で、体の作りはゾウに近い。
赤身の主役ミオグロビンが多いほど色は濃く、香りは“肉らしく”なる傾向があります。
加えて、マンモスは寒冷地に住んでいるため、脂肪は皮下脂肪に集中している可能性が高いです。
つまりマンモスの肉は霜降り肉ではない可能性が高いです。
余談:なぜ“マンモスは食べられた”伝説が消えないのか
理由は単純で、物語として面白いからです。
“深い氷から甦るステーキ”は、一度聞いたら忘れがたい。
さらに永久凍土=冷凍保存庫という直感的な誤解が、もしかしたら食べられるかも?という期待を我々に与えてしまっているのかもしれません。
そこに1951年の“伝説のディナー”の尾ひれが重なり、神話が増幅された——というのが、私の推測です。
おわりに
「マンモスは美味しいのか」という問への正直な答えは、誰にもわかりません。
だからこそ、私たちは“食べる”のではなく、科学で想像し、文化として味わうのが良いのだと思います。
もし将来、厳重な安全性評価を経た“マンモス風味の培養肉”が本当に口にできる日が来たらいいですね。
きっとあなたは、最初のひと口でちょっと驚き、そして遠い氷の時代に思いを馳せるはずです。