
夜の暗い海でサメがまっすぐ獲物へ突っ込む動画をよく見ます。
ライトも匂いの流れも頼りないのに、どうしてでしょう?
答えはサメは水中のわずかな電気のゆらぎを“見る”ことで、目にも鼻にも頼れない場面で獲物や地形、さらには方角まで読み取っています。
※画像はシュモクザメ
電気感覚の正体:ロレンチーニ器官は「ジェル入り電波受信機」
サメの鼻先や下あごに散らばる小さな黒点——これがロレンチーニ器官(アンプラ)の開口部です。
中はゼリー状の導電体で満たされた細い管になっていて、奥にある感覚細胞が「電位差」を検出します。
ここでいう電気は、ビリビリの大電流ではありません。
筋肉が動くときに漏れる微弱な電場や、心臓が打つたびに生じる電気、さらには水が磁場を横切って動くことで生まれる起電力など。
サメは数ナノボルト/センチメートル級”の超微弱信号まで拾えるとされ、暗闇・濁り・砂の下でも情報が途切れません。
何が“見えて”いる?
電気感覚が描く世界は、大きく獲物/地形・物体/方角の三層に分けると分かりやすいです。
- 獲物
生き物は生体電気を発しています。たとえば砂に潜ったヒラメは筋肉のピクッとした微弱電場を漏らし、カニやイカも歩く・収縮するたびに生体電気を発しています。サメはこれを感じ取って獲物との距離をつめます。 - 地形・物体
金属・岩・貝殻などは導電性や形が違うので、周囲に電位の歪みを生みます。とくに金属のこすれ・腐食は局所的な電場を作り、釣り具やボートの一部がサメを引き寄せることも。“そこに硬い塊がある”をぼんやり感じ取れるので、岩陰の回り込みや障害物回避にも役立つわけです。 - 方角
海を泳ぐ導体=自分の体と海水が地球磁場を横切ると、ファラデーの誘導で超微弱な電圧が生じます。サメはその泳ぎによる電気の傾き”を感じ取り、自分がどちらへ向かっているかを補正できるとのこと。
どうやって方向を測る?——“鼻の配列”が示すもの
電気の世界で方角を掴むには、前後左右に“基準点”が必要です。
そこで効いてくるのが器官の並びです。
ハンマーヘッド(シュモクザメ)の横に広い頭は、左右のアンプラを遠くに離して配置できるため、到来方向の差をより鋭く比べられる“アンテナブースト”になっていると考えられています。
あの特徴的な見た目には意味があったのですね。
ほかの感覚との役割分担——「匂いで探し、電気で確定」
嗅覚は遠距離の探索に強く、視覚は中距離の追尾に便利。
これに対して電気感覚は最短距離の最終確認が得意です。
匂いの源に近づいたら、電気で“生き物の中心線”をロックオン→噛みつく位置を数センチ単位で合わせる。
この三段重ねが、暗闇でも外さない一撃を生みます。
まとめ:サメは“電気の等高線地図”を重ねて世界を読む
- ロレンチーニ器官が超微弱な電位差を拾い、獲物/物体/方角の三層情報を描く。
- 嗅覚→視覚→電気感覚の三段コンボで、暗闇や砂の下でも外さない。
- 形(ハンマーヘッドなど)は電気の到来方向の分解能を上げる“アンテナ”。
つまり、サメの第六感=電気感覚は、世界の上にもう一枚の「等高線地図」を重ねているようなものです。
次にサメの映像を見かけたら、鼻先の黒い点と最後の数十センチの軌道修正に注目してみてください。
あなたの目にも、電気で描く世界がうっすら見えてくるはず。