
ゴリラの握力は400kgから500kgと言われています。これは動物界で最強の握力です。
なぜゴリラは“強く握れる体”に進化したのでしょうか。
暮らしが生む「強く握れる力」
ゴリラの毎日は、竹や樹皮をはぎ取る、太いツルをたぐり寄せる、仲間との取っ組み合いや子の抱え込みといった“包み込んで保持する”動きの連続です。
ナックルウォークが底面を鍛える
拳で接地する歩行(ナックルウォーク)は、手首〜指関節の支持構造(靭帯・腱・骨皮質)を日常的に鍛えます。
直接“握る筋”でなくても、関節がたわみにくい丈夫な“器”が手に入る。これは力を逃がさない手をつくる重要な前提です。
――さらに、毎日の食べ方そのものが“負荷”になっています。
食べ方=負荷:竹を裂き、繊維を引きちぎる
繊維質の多い餌をまとめ、折り、裂く行為は、前腕と手指に地味で確実な負荷を与えます。私は動物園で、ゴリラが太い竹を手首固定→指巻き込み→肘で引くの三拍子でスッと縦割りにした瞬間を見て、**「力任せ」ではなく「伝え方が上手い」**と実感しました。
――この日常の積み重ねに、性差と成長が上乗せされます。
手のつくり:長い指と強い腱、力を逃がさない掌
強い握力は筋肉の太さだけでは生まれません。
ゴリラの手は長い指+比較的短い親指という組み合わせにより、あの強い握力を出しています。
長い指はてことして有利で、深指屈筋などがかかる腱の停止部も発達しています。
掌腱膜や靭帯が厚く、関節がたわみにくいため、出した力が対象物へストレートに伝わるのです。
制御(神経):手首を固め、指で締める「静かな強さ」
ゴリラは筋力を一気呵成の爆発させるよりかは、粘って保持する場面が多い生き物です。
というのもゴリラは木の上で生活しているので木の枝を握って移動する場面が多いです。
ゴリラは前腕〜肩甲帯の等尺性収縮を使い、効率の良い力の伝達が得意です。
大きな筋線維を無駄なく同時動員しつつ、余計な震えを抑える――その結果、静かなのに強い握りが生まれます。
ゴリラとヒトの手の違い
ヒトは長い親指と発達した母指球で細かい操作に秀で、ゴリラは長い指列で太い対象を包むのが得意です。
器用さと強さが両立できないことにより、両者の手に違う得意分野を与えました。
性差と成長:シルバーバックはなぜさらに強い?
オス(とくにシルバーバック)は筋量・腱の太さが顕著で、抑止力としての“つかむ強さ”が選ばれてきました。
子はよじ登りと組み合いで自然に運動学習を積み、成長に合わせて筋・腱が太くなります。
しかし、ゴリラは強いですが乱暴者ではありません。
「強い=乱暴」ではない
ゴリラはあの体格を持っているにもかかわらず、争いは好まない性格です。
有名な胸をたたく動作は「ドラミング」と呼ばれるものですが、これは「お互いに離れて争いを避けましょう」という意味を持ちます。
映画のせいでゴリラには凶暴なイメージがありますが、現実のゴリラは温厚で優しい性格なのが意外に感じます。